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学生にとって、再現可能性の問題、追試に取り組む意義はどのようなものがあるのでしょうか?
・「研究には新規性が必要」と習う
・心理学に興味を持ったきっかけとなる現象や研究にあえて物申すハードル
・限られた年限で学位論文を書くこと、アカデミアへの就職などを考えた時に、追試は業績として認められるのか、見劣りはしないのかといった不安
・ゼミ内で指導教員も含め、慣習的にp-HARKINGに当たるかもしれないことをしていた時に、意義を唱えられるか

これらの問題を乗り越えられるインセンティブ(意義、実装の仕組み、説得のための工夫)はありますでしょうか?
よろしくご回答頂けますと幸いです。

お便りありがとうございます。大事なご質問を、いくつもお尋ねいただいたので、ひとつひとつ、順番にご返事していきますね。 (1) 研究には新奇性が必要か まず、「新奇性がなければ科学研究ではない」というのは、間違った認識なので、惑わされないようにしてくださいね。物理学などでは、過去の測定データを、再度、少し違う機材で確認するだけでも、立派な研究と見なされるようです。もちろん心理学の測定は、そこまで精密なものではないので、比較は難しいかもしれません。ですが、ここ10年ほどで、心理学でも、追試研究の評価が、ようやく認知されるようになってきました。新奇性も大事ですが、追試の成功がなければ、蓄積的に前に進むことができません。同じところをグルグル回ってしまいます。ですので、新奇性は、良い科学研究の条件として、あってもいいけれど、必須だとは言えないでしょうね。それに対して、再現可能性は、それがないと前に進めないものですから、良い科学研究を行うための、必須の条件です。 (2) 心理学に興味を持ったきっかけとなった現象や研究に物申すハードル 何を指して「ハードル」とおっしゃってるのかがちょっと分からないので、頓珍漢な答えになっているかもしれませんが、科学研究は、どんなものでも、何らかの形で、先行研究に物申すものだと思います。科学史を見れば、そんな例で溢れているのではないでしょうか。しかも、その先行研究が自分にとって思い出深いものであれば、なおさらではないかと思います。この件については、もう少しお話ししたいのですが、字数の制限もあるので、次回放送予定の番組の中で、再度、ご返事させてください。 (3) 限られた年限で学位論文を書くこと、アカデミアへの就職などを考えた時に、追試は業績として認められるのか ありがとうございます。とても大事な点ですね。最近は著名なジャーナルでも、事前登録を用いた追試研究が多く掲載されるようになってきましたので、業績という面では、状況は改善されつつあると思います。以下のリンク先に、そうしたジャーナルのリストがありますので、良かったら一度ご覧ください。 https://www.cos.io/our-services/registered-reports ご返事の残りの部分は、ご専攻が、心理学のどの領域かによっても、少し変わってくると思いますので、分けて説明させてください。 まず、知覚心理や認知心理など、比較的大きな効果量を持つ現象を、研究対象とする場合です。目標となる効果量が大きい場合、比較的小さなデータ (多くて数百人程度) でも検出することができますから、ひとつのラボ内で、データを取ることが可能な場合が多いと思います。そうしますと、追試も比較的簡単に行うことができますよね。 そこで、いくつかの実験を行う際の、最初の実験として、先行研究の追試を、検定力分析を踏まえて、事前登録付きでやっておかれることを、お勧めします。効果量をより正確に推定できますから、その後の実験でも、より安定した検討が可能になると思います。追試がうまく行かなかった場合でも、事前登録をしておけば、どこかのジャーナルに掲載してもえる可能性が高まると思います。 次に、社会心理学など、研究対象となる現象の効果量が小さい場合について、お話いたします。この場合、例えば博士研究の一部として、追試を行うかどうかは、慎重にお考えいただく必要があると思います。詳しくご説明しますね。 効果量が小さい場合、数百人から数千人のデータが必要になることは、ごくごく普通のことです。特に実験室実験の場合であれば、それだけの量のデータを集めるだけで、数年が経過してしまう可能性すらあります。複数のラボ間で協力してデータを収集する場合でも、やはり調整に大きな時間と労力がかかりますし、また、そもそも協力してくれるラボが見つからない可能性も考えられます。ですから、ご心配の通り、大学院在籍期間など、限られた時間内で、こうしたプロジェクトに挑戦すると、とても大きなリスクを背負い込むことになってしまいます。修了までの、すべての時間と資源を、追試研究に費やしてしまうかもしれません。 そこで、追試研究に入る前に、まずはご自身の研究機関での、修士号や博士号などの「授与規定」を、指導教員の方に尋ねるなどして、ご確認いただいてもよろしいでしょうか。おそらく現時点では、多くの研究機関で、追試だけで研究をまとめるというのは、現実的ではないのではないかと思います。その結果、追試をあきらめざるを得なくなる場合も、多いのではないかと思います。 ただし、その場合であっても、先行研究の信頼性を検証することは、十分可能です。メタ分析を行ってください。直接的追試ほどの信頼性はありませんが、メタ分析でも、ある程度、対象となる現象の効果量を推定することができます。メタ分析も、しっかりしたものを行おうとすると、大変な時間と労力がかかりますが、それでも、大規模な直接的追試よりは、楽な場合が多いように思われます。また、メタ分析は、ちゃんと実施すれば、大変価値のあるものなので、論文として受理される可能性が高いと思います。ご自身の研究の、最初の部分として、メタ分析を行われることを、お勧めします。 また、もうひとつのお勧めは、サイドプロジェクトとして、追試に携わることです。Psychological Science Accelerator などの、国際プロジェクトに参加されると、ご自身のラボ内では経験できない、大変有意義な時間を手に入れることができると思います。日本国内でも、国際プロジェクトへの参加も視野に入れた環境整備を、今後進めていく予定とお聞きしています。もしご関心があれば、再度ご質問いただければと思います。 -------------------------------- ごめんなさい。どうやら、このあたりで字数制限に引っかかってしまうようです。続きは、Twitter アカウントの方から、ご返事させてくださいね。

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