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代理戦争という言葉の定義について質問させていただきたく思います。

これは第二次大戦後から冷戦期にかけて主に用いられた言葉であると思いますが、今般の宇露戦争においての文脈で、親露的傾向を持っておられるように思われる方と、そうではない方が、代理戦争という言葉についてTwitterなどで論争している様子が観察されます。

宇露戦争は西側諸国の代理戦争でもあると述べる方がおり、それに対して、ウクライナは国土防衛戦を戦っているのであるから、これは代理戦争ではない、と反論する方がおられます。

宇露戦争は代理戦争ではない、と述べる方は、代理戦争とはどこかの国に使嗾されて戦いあうような戦争を指し、この度の宇露戦争においては、ウクライナが当事者として戦っているのであるから代理戦争ではないという論理を展開されます。

宇露戦争は代理戦争である、と述べる方は、戦争において当事者が他国からの援助を受けて戦争をしており、そのためにあたかも他国の代理として戦争をしているようにみえる状況があればそれはもはや代理戦争である、というような論理で反論します。

ウクライナが西側諸国の代理戦争を戦っているという論を強く否定する背景には、おそらくロシア側の展開するプロパガンダとしての物語を肯定することを避けたいという思いがあるのであろうと思います。


しかしながら例えば朝鮮戦争などは一般に代理戦争と言われるものであると思いますが、北朝鮮も韓国も、自ら良いと思うイデオロギーに従って、当事者性を持ちつつ全力で戦っていたのであると思います。

ですから代理戦争という言葉を用いるには「直接に交戦している国家が当事者性を欠くこと」を要件とするかのように言うのは私としては疑問なのであります。

個人的にはウクライナは国際法上の自衛権を行使しているが、それは同時に代理戦争の構造を持っており、またそうであるからといってロシアの侵略を正当化するものではない。
またロシアが予防戦争とか代理戦争とかいう概念を援用して自らの自己正当化を図ろうと画策していたとしても、言葉というものの定義を(それが良い動機でなされるものであるにせよ)政治的主張の要請から書き換えるというのはいかがなものかとも思うのであります。

先生はこの度の宇露戦争においてウクライナは、国際法上の自衛権を行使しており、かつロシアの侵略行為を正当化するものではない」という留保をおいたうえで、西側諸国の代理戦争を戦っているという構造があると思いますか?

あるいは、ある戦争に対して代理戦争という言葉を当てはめるためには、直接の交戦国が当事者性を欠いた戦争を戦っているという要件が必要であると思いますか?

代理戦争について大変よく考察されていて、えっ、おじさんどうしようここ質問箱なのに、みたいな気持ちもないではないのですが、僕からは取り急ぎ2点です。 第一に、ご指摘のように当事者性は重要であると思います(この意味では朝鮮戦争は代理戦争でないとも言えると思う) 第二に、そもそも西側はこの戦争に利益を見出しているのかという点です。西側がこのような事態を望み、ウクライナを利用して戦略的利益(例えばロシアの弱体化)を追求していたというならばウクライナの当事者性に関わらず代理戦争であるという議論が成り立つとも思うのですが、そもそも西側にとっては今回の事態はロシアが勝手に始めたものであって迷惑千万というのが実際のところではないでしょうか。 以上の2点からして、やはり僕はこの戦争は代理戦争とは言い難いと考えています。

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