7/22

こんばんは。
先日のイベントにて、新刊を購入し拝読させていただきました。ペーパーにQRコードがありましたのでたいへん遅ればせながら送らせていただきました。(約2ヶ月ほど経ってしまいました。すみません)


「橙の灯火あるいは荒野」について
ふたりのなんとも言えない距離感が良かったです。
ラストシーンへの仕掛けも読み勧めていてあれ?と思ったところが伏線になりページが混濁しているところも面白いと思いました。
ちょっとギクシャクした、カチッとハマらないようなふたりがラストでやっとちゃんと始まるのもまた良かったです。ビとの冬のシーンから始まる、グレーな曇り空のようなどんより雲な関係がラストの花で日常が少し色付いてくるような、そんな印象を持ちました。
また、一段落の文量が多く、まるで言い立てているような一人称からの状況説明が独特のスピード感や重みを感じて、とても良かったです。

以下特に良かったシーンです
p.9 l.3 案外と繊細な〜、というビのギャップ自体に萌えますし、それを特別仲が良い訳ではないワが知っていることも良かったです。

p.14 l.10 軍人についての段落ですが、この文章がとても好きです。軍人とは?ということが銀英伝のテーマのひとつにもなっていると思っています。その中でのこの文章は文章自体の素晴らしさもさることながら、その考えにとてもぐっときました。
目的のために死ぬことが軍人であるが生への執着もすべきだと考えながら、ワの病室に辿り着くのもまたエモいです。

o.19 l.12 何も考えてないのでは〜、以下のワの表現がとても良かったです。原作のワのなんだろうこの人は、普通の人なんだけれど何か引っかかりというほどではないけど何か個性が隠れているような、といった私の中でもやもやっとしていた彼の気質についての描写にストンと落ちました。
剛毅で思慮深いという性格の裏面として、考えていそうで考えていない、情緒もないし固執もしない、とビが感じているワ、という図が素敵でした!

p.26 l.11 余韻がないワと残されるビ。いつも放っておかれるビ、がちょっと苛立ってきゃんきゃんしているのは可愛くもあるし切なくもありました。

p.31 l.9 異端なのはおれたちだけ〜、というビのこれからのことを考えるととても切なくなりました。その前の曇り空に例えた表現もとても好きなのですが、その曇り空の下の日常の中で自分を飼い慣らすしかないビのこれからの長い人生(ウッ…)…の陰鬱さを払拭するためにワと戯れる、というところがとても良かったです。


「HEAVENS DOOR」について
今回の新刊の三作の中では最も気に入りました。ストーリーやその星の細かな設定がとても面白かったです。ミとロの珍道中のような旅であるのに、ラストの暗い展開に収束しそれが原作に繋がっていく要素もあり、たいへん面白かったです。

p.5 l.13 国策メーカーという設定が良かったです。このような経済的な設定は面白いなあと思いました。

p.8l.10 心を痛めていることを許容できない、同情されたくない、可哀想に思われたくないロイエが露悪的になるところが良かったです。ロイエのどうしようもない感じがとってもロイエンタールでした。

p.10 l.12 モーテルやその経営者の文化の記述がよりこの星の想像が深まり想像しやすくて良かったです。ローカルな文化があり、それとともに暮らす人が記されているとより住民が人間らしく見えてくることでよりこの星の絶望が見えて良かったです。

p.12 l.6 ホモ呼びのミ、とてもミらしくてたまりませんでした。この国の正道ではない同性愛をめちゃめちゃ蔑視している感じが出ていて、原作中の妙な正義感が見えていて良かったです。

p.14 l.13 食事のパンひとつからその星の実情が見えてくるというのが面白かったです。酸が強く魚もいない海という設定もまた面白く、そこから彼らの一生を想像するロイエがまた良かったです、その驕りからは都市部のおぼっちゃま貴族、というように感じました。また、辺境ではないにしろこの星や帝国の抱える限界感も垣間見えて興味深かったです。

p.18 l.8 ロの今までとこれからの生と死を考えるようなシーンだと感じました。この星に来て少しは解き放たれたとしてもこの住人や生活を見ることでやっぱりそこの考えに繋がっていくのかなという気がしました、ラをふさわしいか見定め続けないとならないしもしふさわしくないとしたら…?というロイエしぐさも良かったです。

p 25 l.4 実験場の星という設定が面白かったです。そのせいで老けている人間というのもこの星の凄まじさを表して愕然としました。それに対するロイエも良かったです。弱い立場やそれに甘んじる、無視され透明になってしまう数字だけの人間を実際に見て話すという経験をしながらも、同情もしないしこんな人生はごめんだと言わせしめるその傲慢さが、冷めているロイエといえども真っ当な帝国軍人らしくて良かったです。
来る日も来る日も〜人生になんの意味があったのか、〜道化のように上に従い、という部分はロイエ…となりました。

p.32 こうして死にたかったという彼らがまたロイエと繋がってみえました。自分の死に様をどう選ぶかという感覚があるロイエ。
また、このような苦しい状況の彼らが宗教にすがり海に身を投げるというのも興味深かったです。原作中だと地球教徒はただのカルトでなぜこんなによく分からない精神観にハマってしまう人が多いのかと思いましたが、本作を読んで確かに下々の民衆の中には飢えて非常に凄惨な生活をほとんど強いられている人もいたであろうし、酷い状況の中では宗教的な精神が生まれて流行るというのは歴史上よくあることで、そういうことだったのだろうと納得しました。そこに勝算を見た商人もいたかもしれないですし。とても興味深かったです、

p.33 l.13 矜持に殉じる彼らに自分を重ねるロイエが良かったです。ロイエがこの旅で自分を見つめ直したかった訳ではないけど結果的に後々繋がる伏線のような考えがすでにあって、薄っすらと予感させる本編はとても面白かったです。
続きます→

大変遅くなりましたが、銀英本の感想をいただき、ありがとうございます。隅々まで読んでいただき恐れ多く、その反面とても嬉しいです。本当にありがとうございます。 橙の〜は、ビとワの二人の関係も書きたい一方で、二人の人生観や生死観なども覗きたいという気持ちがあったので、そうしたところも楽しんでいただけて本当に嬉しいです。二人とも紛れもない帝国軍人でありながら、その思考の中身は異なり、互いに理解できるところもあれば思いもよらないところもあるというのが、この二人のCPの魅力の一つだと思っていて、「ちょっとギクシャクした、カチッとはまらないようなふたり」という表現に、そう、それです!とめちゃめちゃ頷きました。ありがとうございます。 HEAVENS〜は、原作の隙間の設定を勝手に妄想するのが好きで書いている一方で、捏造し過ぎでは……と自分で思っていたので、細かい設定も楽しんでいただけて安堵するとともにとても嬉しくなりました。それから、ミタマのホモ呼びに反応ありがとうございます!書きながら、絶対にこの台詞入れたい……と思っていました。ミタマの妙な正義感、いいですよね。また、ロイエンタールの思考の諸々も丁寧に汲み取ってくださって本当に嬉しいです、ありがとうございます。 804/6、ワが、自分の"強者"としての面と、ある意味帝国の歪さの被害者でもある面の両方を否応がなく突きつけられるような話を書きたいなあと思って書いていたので、その双方を汲み取っていただけて嬉しいです。帝国の非対称性や負の側面は、考えれば考えるほど面白くて、また書きたいなあと思っています。 二冊とも丁寧に読んでいただき、そしてこの上ない感想を送っていただき、本当にありがとうございます。とても嬉しいと同時に、励みになりました。重ね重ねになりますが、ありがとうございました!

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