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石野さんは藤城裕士さんの教え子だそうですが藤城さんはどんな人物だったのか教えてください。

 この話は無茶苦茶長くなるぞ😅。藤城裕士さんには感謝しきれないほど色々な事がありますからね☺️。まぁ、全ては書けないので、出会った頃のエピソードからいくつかご紹介しましょう。  私が藤城さんと出会ったのは二十歳の頃。某声優専門学校の先生のお1人として藤城裕士さんがいらっしゃいました。その学校は今のようにアテレコやアフレコを教えてくれると言う感じではなくてね。マイクの使い方とかスタジオ実習はなかったし、業界の作法もあまり教えてくれなかった。卒業公演のようなものもなかったので、同期が集まって劇団を立ち上げましてね。勝手に卒業公演を演ったんですよ😅。  勿論卒業に合わせて演った訳ですから、お世話になった先生方や学校関係者をご招待しました。素人が情熱だけで演った舞台ですから良い訳がない😅。それでも先生方は皆観に来てくださって、演ったと言う事実に対してはポジティブなお言葉をくださいました。その中でたった一人だけ「あんな酷い芝居を金を取って見せるなんて泥棒より酷い」って言った人がいましてね。それが藤城裕士さんでした😆。  プロとして実績のある人からそう言われれば返す言葉などあろうはずもありません。藤城さんはシュンとしている私達を暫く見てからこう仰いました。「お前達、本気で芝居をやりたいのか❓」。勿論皆「演りたい」って言いましたよ。特に私は、その時既に声優より舞台俳優に興味がありましたからね。そして藤城さんは少し視線を外して考えているようなそぶりを見せてからこう仰った。「そうか……。本気なら一緒に勉強するか❓」。  私達が卒業公演に向けて立ち上げた劇団は、その初演が解散公演となり😅、皆それぞれ進路が別れていきました。その内の私を含めた何人かが藤城さんの内弟子の様な形で稽古を付けてもらう事になったのです。奥様が料理研究家で仕事場を持っておりましたので、週に3日ほど空いている時間を稽古に使わせて頂く恰好で、初めは「本読み勉強会」と言う体でしたね。奥様の仕事で料理の撮影があった日の夜には色々な料理が残っていて、当時お金が無くて常に空腹だった私は随分と食べさせてもらいました。私の食べっぷりを見た藤城さんはよく「竜はまるで欠食児童だな😄」とか言ってましたね😅。  ある時、藤城さんが「本読みの形で勉強出来るのはここまでだな。これ以上は舞台に立たないと上手くならない」と仰って、演劇企画集団「ぐりま」が立ち上がりました。勿論そこまで行く間には辞めていった仲間もいました。いざ舞台を演ろうとなった時、藤城さんは毎回必ず一人はベテランの俳優をキャスティングしました。そしてそれがどれ程有り難い事だったのか、今になってようやく分かるのです😭。  考えてみてください。役者なら上手い人と舞台に立ちたいに決まっています。若い素人の寄せ集めみたいな所で演って面白いはずはないし、何のメリットもないのです。それでも引き受けてくださったのは、藤城さんのお人柄ゆえだったのだろうと思うのです。とにかく博学で器用で何かにつけて気遣いが出来て面倒見の良い方でしたから、あちこちに売った恩は沢山あったのでしょう。普通なら絶対に断わる所を、藤城さんから頼まれては断われなかったのだろうと思うのです😅。  お酒が好きな方でしたから、稽古が早めに終わるとよく飲みに誘ってくださいました。そして勘定の時に「500円出せ」って言うのです。そんなに安いはずもないのに、それ以上は受け取りませんでした。「ご馳走さまでした」って言うと「ご馳走なんかしてない。割り勘だ」と仰いました。若い者に気遣いさせないように、そして「藤城さん、飲みに行きましょうよ❗」って言いやすくするための心遣いだったのでしょう。これは私も真似てます😅。  25歳くらいの時、舞台を演る事のもう一つの意図に気付かされました。藤城さんはそれまでに事務所関係者を沢山招待していて、私達をデビューさせようとしていたのです。「これだけ芝居が出来るんだぜ。うちの事務所の若手に引けは取らないだろう」と私達の前で言っていた事がありました。そして程なく「ぐりま」の一同は、当時藤城さんが所属していた事務所の預かり所属になったのです。  私はすぐにオーディションのチャンスに恵まれて顔出しでデビューする事が出来ました。所が生意気な事にその後私は、藤城さんの芝居に対する考え方と自分が求める表現の仕方が違うと言う事に耐えられなくなって、「ぐりま」を無期限休団と言う事にしてもらいました。実質的には退団に近かったのですが、それまでの恩義を思うと「辞める・離れる」とは言えなかったのです。  母と同い年だった藤城さん。私が「ぐりま」を離れた後は疎遠になってしまいましたが、今頃あの世ででどうしてるんでしょうかね。大好きだった釣りでもしながら、釣った魚で一杯やってるんでしょうか☺️。  恩師を思い出す機会をくださったこのご質問に心から感謝です🙏。

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