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10式戦車にも、RWS(遠隔操作火器)が必要だと思いませんか? 

RWSにも色々有りますが、恐らく貴方が想像しているであろう、例えばそのMBT向けとして代表的なKongsbergのRS4クラスのRWSと言う事であれば、優先順位は低いかと思います。 根拠は以下にまとめますが、結論から言うと将来的にはその可能性は有るとはいえ現段階では10式への装備は時期尚早であり、またその際には従来の物とは性格が異なる仕様になると思われる事から、各国の動向を注視しつつ研究開発に留めるのが無難でしょう。 本題に入る前にそもそも"RWS"と一口に言いますが、そのカテゴリー自体単なる潜望鏡型の物からIFVに搭載される無人砲塔型の物まで多種存在し運用も異なる中、巷で話題の"ドローン"がそうである様に主語が大き過ぎそのままでは全く話にならない為、ここではRS4等をコンベンショナル型、SEOSS-2等をMSSA型等と大きく定義し、多数の例外も存在する中飽くまで一般的にはとの大雑把な括りで取り扱う事を最初に断わっておきます。 まず冒頭に優先度は低いと述べたコンベンショナル型ですが、そのクラスのRWSには独立した視察能力(車長潜には劣る)、武装等といったメリットが有りますが、裏を返せば既存の車長潜と競合する事を意味し、その運用には想像以上の制約が存在します。 ALSを搭載した10式等三人乗りの戦車においては当然車長がその操作を担当する事になりますが、基本的には車長は砲手・操縦手への指示、小隊行動に専念する上に、後付けでインターフェースが独立している事も多く、まず操作自体困難です。 4人乗り等で装填手が一部作業を分担する際はその限りではありませんが、その煩雑さを例えるなら車(戦車)を運転しながらカーナビ(車長・砲手潜)を見つつスマホ(RWS)を弄る様な物です。事故ります。 また、そうして操作可能な場合においても大抵は主砲塔で対応可能なケースが殆どで使用機会は限られ、前述したRWSのメリットや高仰角射撃時等にはその効果を発揮するものの、それにしても限定的なため費用対効果の点から米国のエイブラムスを始めとした一部のMBTにしか搭載されていないのが現状です。 一方で近年はそうしたデメリットを解消する形で、車長潜と統合されたMSSA型(Main Sensor Slaved Armament)のRWS※が登場しています。※RWS型SEOSS-2、PASEO等 これは既存の車長潜を置き換える形で装備されるRWSで、従来の車長潜の運用の延長線上で使用可能である事から無駄が無く、純粋に火力を向上させる事が可能です。 仮に何らかの必要性に駆られ10式に量産型としてRWSが装備されるのであれば必然的にこの形式となるでしょう。 とは言え、実際には砲塔火器や視察装置の故障時、調整された防御戦闘時における非装甲目標との交戦時でしか効果的に使用できないのではないか等、その有効性は依然議論の段階にあり、やはりこれも10式向けとしては費用対効果の点から装備される可能性は低いと思われます。 またこれはコンベンショナル型にも言えますが、10式を始めとした本邦のMBTは主に対空用として機関銃を搭載しており、回転翼機ならまだしも固定翼機(攻撃機)に対しては不向きである点も優先度を下げる要因と成り得ます。 一般にRWSは低速・遠距離目標に対する精度は高いですが、固定翼機などの高速目標を索敵し捉え、広い散布界に弾幕を張るには依然として手動での機関銃操作が適しています。これを解消するにはより高性能なFCSやレーダー等を搭載する必要がありますが、それについてはこの文脈では無く後述する様なまた別の議論が必要となるでしょう。 さて、最後にここまで否定的な見解を述べてきましたが、昨今はC-UAS需要の高まりと共に、エアバースト弾やレーダー等と組み合わせた対空砲とも言える新たなRWS(コンベンショナル型、MSSA型問わず)が注目されつつあります。 無人機(LM等を含む)の脅威が飛躍的に高まりつつある中、将来的にはAPSと共に次世代戦車においてはその対処能力は必須要件になる可能性が高く、何れ本邦もその流れに乗るのは確実でしょう。 そこまで来て初めて現実的な検討段階に入ると考えられますが、前述した通り従来のRWSとは異なる運用の装備になる上に、センサー類についても別途用意する必要が有る事(物によるとは言え)から大規模な改修になる事はほぼ確実です。また、その場合においてもレーダーを用いるAPSと同時に統合した方が都合が良い事からも当面先になる事は間違い無いでしょう。 その為、早くても実際の装備はAPSを含め次世代戦車のコンセプトが固まるのと同時期になると思われますが、レトロフィットの形を取るなど10式についてはそちらで仕様が定まってから判断しても遅くは無いかと思います。 余談となりますが、10式等既存のMBT向けとしてはRWSはその優先度は低い一方で、前述のデメリットが生じない車長潜やFCS制御の対地兵装を装備していないAPC等ではある種小型の砲塔として効果的に運用可能であり、既に共通装輪IFV型の例も有りますが陸自においてはそちらに優先的にRWSが装備されるのが妥当かと思います。

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