10/19

ここ何年か機能性食品が増えたり、最近は完全栄養食と謳うものも幾つか出てきています。私もジム通いを始めてから、食の栄養面が気になりだして、その類のものに手を出しています。よく出来ています。しかし栄養バランスを追求する世界は、やはり味気なく感じる自分もいて、どうもすっきりしない日々です。とはいえ、欲望のままに食べる生活にはもう戻れず…。週に1,2食だけはご褒美として好きな物を食べてますが、それでも揚げ物とかは避けがちです。
イナダさんはこうした葛藤や栄養面、健康面との兼ね合いとか悩むことはないでしょうか?

あくまで自分の話で言うと、僕の場合、欲望のままに食べたい物を食べるだけで自然とある程度のバランスがとれる感覚があります。 というのも、僕はとにかく野菜が好きかつ品数多くないと気が済まないので、おのずと野菜中心のメニュー組みになり、豆腐やダールを中心に豆製品もほぼ毎日食べ、肉や魚も食べ、炭水化物は大好きですが野菜やタンパク質(や、お酒)でほぼ胃が満たされる結果量はそんなに食べない、みたいなパターンになるからです。 また、一度に食べる量はたぶん多いのですが、そのかわり食事回数は1日1.5食程度なので総カロリーも総塩分量も計算上はおおむね許容範囲におさまります。 もちろんそれで完璧だと思ってるわけでもなく、 ・酒はさすがに飲みすぎだ ・油脂に対してノーガードなのはいかがなものか ・たまに突発的にやらかしてしまう炭水化物ドカ喰い(主に麺)はヤメロ ・夜遅くに食べるのは避けろ といったツッコミポイントも多々ありますが、まあざっくり概ねOKだと思ってるということです。 しかし質問者さんも当然お気づきの通り、現代の「健康食」の概念はもっとずっとストイックです。 糖質や油脂は、物理的に可能な限りゼロを目指します。「減らす」ではなくあくまで「無くす」にダイレクトにベクトルが向きがち。 僕はノンオイルドレッシングというものがどうしても受け入れられないのですが、なぜ「ノン」でなければいけないのか。ノンオイルにすることでカットできた-45kcalには、サラダをおいしく食べるというヨロコビを半減させるに値するだけの価値は本当にあるのか。 胸肉の皮を剥いだ事によるたかだか-28kcalには、あの圧倒的なおいしさを諦めるだけの意味が本当にあるのか。 あくまで仮にそういう弛まぬ細かい積み重ね結果、寿命が幾ばくか伸びたとして、その伸びた分の時間には快楽を諦めただけの価値はあるのか。 そういうふうに考えてしまいます。 そこには科学において不可欠な「量の概念」が希薄で、むしろ宗教的な「穢れの思想」すら感じることすらあります。油脂はケガレ、糖質はケガレ。 かと思えばアボカドやグレープシードオイルはなぜか突然「免罪」されたりして、それらが「良質の油脂である」という科学的根拠まで全否定するつもりもありませんが、そこにはやはり「量の概念」が欠如しているように思われます。 このあたりは最終的には ① 少しでもよりおいしいものが食べたい ② 少しでもより健康的な(とされる)食事がしたい の、どちらを優先させるかという話でしかないのかもしれません。 僕は圧倒的に①が優先です。あくまでそれを前提とした上で、おいしさを損なわない範囲で②の選択を行う、というのがスタンスです。 もちろん②を最優先する思想を否定するつもりは全くありません。それが本当に叶うかどうかは別としても、人生の目標を「健康で長生き」に一点張りするのはむしろ真っ当な生き方だと思いますし。そういう意味ではむしろ僕が不健全です。 ①でも②でもなく、自分の考える「美」のために若くして命を落としたボディビルダーの方がいらっしゃいましたが、あれもまた(壮絶すぎではありますが)ひとつの生き様でしょう。 そこまで行かずとも、プロテインと皮無し鶏胸肉とブロッコリーとジムで自分を理想の肉体に近づけていくのは結構なことです。誰もがおいしいもののために生きているわけではない。 質問者さんはもっとバランス良く①と②を両立させようとされている方とお見受けします。それはもちろん難事業です。そこで重要になるのがやはり科学だと思います。 ビジネスとしての「健康的な食品」の売り手は、とかく一見「科学的」なふりをして「非科学的」な主張を行うことが多いと感じています。それはもう薬事法に引っかからない限りは企業努力の一環なのかもしれませんが、それによって「量の概念」を無視した「穢れの思想」が生まれているのではないか。消費者側はそれに踊らされないことが大事なんじゃないかと思います。 どうでもいい話ですが、僕は若い頃「いかにも不健康そうなヒョロガリ」に憧れました。(正直、今でもそうかもしれませんが。) 自分は骨格的にも体質的にもそれは無理なので余計に憧れがあったのかもしれませんが、とにかく「いかに筋肉を付けずに痩せるか」が大問題でした。 そのせいで「身体を鍛える」という行為から常に目を背けてきましたし、それはまた「ちょっとでも時間があればひたすらグータラしたい」という気性とも実に相性が良かったのです。 その結果僕の体脂肪率は常に高値安定です。こればかりは実にイカンです。 質問者さんはジム通い頑張ってください。

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