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カツカレーに比して、天ぷらうどん(別皿ではない)、排骨坦々麺などは揚げ物をトッピングする意味がちゃんとあるなと思います。ドロドロの海老天が大好きでして…
クリスピーであることが本懐であるはずの衣が熱い出汁・スープを吸った時のシナジーは何故なのでしょうか。油脂の性質なのでしょうか。
また、その揚げ物のポテンシャルをインドカレーにおいて活かす術はないのでしょうか。あとパスタとかにも意外とまだないよなと思います

ちょっと面白い説を聞いたことがあります。 日本人は油を高温で熱した風味を好むが油そのものはやや苦手。なので、一度揚げたものに熱湯をかけたり蒸したりして「油抜き」する手法や、汁に浸したり煮たりして油を分散させる料理が発展した。 というものです。 確かにこのような手法は日本以外ではほとんど見ないような気がします。 最近は日本でも 「揚げ物は揚げたてをクリスピーな状態で食べたい」 というニーズが増えてる気もしますが、こういう 「せっかく揚げたものをべしょっとさせる食文化」 も、やっぱりしっかり残っていってほしいと僕も強く思います。天丼、かき揚げせいろ、百合根饅頭、どれもシナっとなってるからおいしい! クリスピーであることは決して「本懐」ではなく、バリエーションのひとつにすぎないのだ、と僕は主張したいです。 さて、次は汁側からの視点で。 天ぷらうどんやたぬきうどんなんかは、揚げ物が汁の方にも影響を与えますよね。 僕は、あれは「テンパリング」と同じ効果だと考えています。熱した油を仕上げにジュッとやるアレです。 だいたいどんな国でも汁気のある料理を作る時は、まずオイルで香味野菜やスパイスなどを高温で炒め、そこにメインの具材や水分を次々に加えていく流れが一般的です。 和食の場合はこの工程をとることが極めて少ない。オイルなしでいきなり水分でいろんなものを煮ていく。 中国料理やインド料理なら、炒める工程を経ずに煮ていった料理の最後に熱した香味油をジュっと投入して仕上げらことがあります。「水煮」「清蒸」や「ラッサム」などもそれに当たります。 そのかわり日本では、高温で熱した油の風味を纏った「天ぷら」などを加えている、というのが僕の解釈です。テンパリングの油温は190〜200度強なので、天ぷら調理時の温度帯とも近いです。天ぷら自体は冷めてもその風味はもちろん残っています。 和食の場合汁物でその「高温の油」の風味を得ることは滅多にないので、天ぷらうどん/蕎麦はそれを楽しむ貴重な機会。 また、焼いた鴨肉と、その脂で焦げるまで焼いたネギを入れる「鴨なんばん」は、揚げてない分もっとテンパリングに近いですね。 さて、これが「揚げ物」「汁」双方から見たシナジーです。 ではカレーはどうでしょう? そもそも高温の油で加熱する工程からスタートするカレーにとって、揚げ物から受ける恩恵は極めて薄いです。 揚げ物側から見ても、「油抜き」や「分散」は起こりません。 もちろん世の中にはカツカレー好きな人がたくさんいるわけですから、何らかの別の形のシナジーが起こっていることは推察できます。ただしそれは天ぷらうどんのそれとは全く機序が異なるということはお分かりいただけたかと思います。 そして僕がカツカレー苦手で天ぷらうどんは好きな理由が言語化できて今スッキリしてます。 インド料理だと、サッパリしたヨーグルトベースのグレイヴィに野菜のかき揚げ的なものを入れた「カディパコラ」やサンバルにワダを沈めた「サンバルワダ」などがありますが、ノンベジではちょっと思いつかないですね。肉類のカレーはその調理過程でしっかり油を使いたいからかもしれません。 パスタだと、パン粉をカリカリに炒めて最後に振りかける手法がそれに少し近い気もしますが、やはりこちらも基本的にはスタート時にテンパリングに近いことを行う調理体系なので必要性が薄い(パン粉も割と粉チーズの代用的な位置)のかも。 その点、名古屋のあんかけスパは、パスタと揚げ物が見事にシナジーしている料理と言えるのかもしれません。ソースに油分がほとんど無いことがポイントなのでしょう。

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