「辺野古に基地が移設されても普天間は返ってこない」という言説は、米軍普天間飛行場の返還を巡り、当時の稲田朋美防衛相が2017年6月の参院外交防衛委員会の答弁で、移設先の名護市辺野古の新基地建設が進んだとしても、それ以外の返還条件が満たされない場合は普天間が返還されないと明言したことが基になっていると理解しております。 返還条件は8項目あり、防衛省も従来、条件が満たされなければ返還されないとの見解を示しています。防衛相が「返還できない」と明言したのは初めてで大きな波紋を呼びました。 普天間飛行場の返還条件は2013年4月、日米両政府が合意した嘉手納基地より南の米軍基地の返還・統合計画で決まりました。 条件は(1)飛行場関連施設等のキャンプ・シュワブへの移転(2)航空部隊、司令部機能、関連施設のシュワブへの移設(3)必要に応じた飛行場能力の代替に関連する航空自衛隊新田原基地・築城基地の緊急時の使用のための施設整備(4)代替施設では確保されない長い滑走路を用いた活動のための緊急時における民間施設の使用の改善(5)地元住民の生活の質を損じかねない交通渋滞、諸問題の発生回避(6)隣接する水域の必要な調整の実施(7)施設の完全な運用上の能力の取得(8)KC130空中給油機の岩国飛行場の本拠地化—の8項目となっております。 委員会で議論になったのは(4)の項目でした。普天間飛行場の滑走路は約2700メートルですが、辺野古はオーバーランを含めても約1800メートルで、短くなります。 そのため米側が「大型の航空機などが使用できる滑走路を求めている」(防衛省関係者)ため、民間空港の使用が想定されるということでした。現状では日米間の協議で使用する空港は決まっていません。 そこで、稲田氏は仮定の話だとした上で「普天間の前提条件であるところが整わなければ、返還とはならない」と明言し、新基地が建設されても普天間が返還されない可能性を繰り返しました。 返還条件の8項目については、防衛省も琉球新報の取材に対し、条件を満たしているのは(8)だけだと回答しており、稲田氏と同様の見解を示しています。 辺野古に新たな基地が建設されても他の返還条件が満たされない場合、米軍が辺野古と同時に使用する可能性は否定できないと考えております。
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