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寝取られというジャンルについて、どう思っていますか?

寝取られは、凌辱ものの別バージョンです。つまり、本質的に凌辱ものです。キーとなるのは、女性のポジション変化(性的&女性的グレードの変化)です。物語の開始地点では、ヒロインは女性的&性的な品位や格付けは高いものに設定されています。しかし、終了地点では、情欲の獣レベルまで――文字通り地に落ちます。英語では品位や等級、格付けが下がることをdegradeと言いますが、凌辱ものも寝取られものも、ともにヒロインが性的&女性的にdegradeするのです。そしてヒロインの性的&女性的degradeが、凌辱ものの特徴なのです。 凌辱ものと寝取られものとの違いは、ヒロインをdegradeする主体です。凌辱ものでは、男性主人公がヒロインを直接degradeします。寝取られものでは、男性主人公ではなく、別の男性――会社の上司だったり赤の他人だったりする男――がヒロインをdegradeします。 男性性の損傷が激しくなかった1990年代では、男性主人公に自分の姿を重ねて凌辱の快感を味わうことができました。悪意と性欲の固まりである男性主人公に感情移入することが時代的&男性性的に可能だったのです。しかし、日本が不況に陥り、派遣法が改正され、解雇が珍しくなくなり、仕事だけ増えて給料は上がらない状況が長引くと、90年代の頃のような状態の男性性を維持できなくなります。男性性の損耗が90年代より激しくなったのです。その結果、90年代の凌辱ものにあったような男性主人公は、読者にとっては遠すぎる存在、感情移入できない存在となります。あまにりも凶悪すぎる男性主人公に没入するのが難しくなります。社会自体が悪意の固まりへと向かう中で、その悪意の固まりに自分を投入することは難しかったのです。でも、その悪意の固まりが第三者ポジションなら? 主人公ではなく第三者ならば――第三者を眺める形ならば――凌辱の快感を味わうことができます。 今、エロマンガでは凌辱ものは売れないと言われています。でも、凌辱ものよりは寝取られものが出ているイメージがあります。90年代から2000年代にかけて変化した「男性の社会的・経済的事情」と「男性性の事情」とに対応したもの、「男性の社会的・経済的事情と男性性」の変化に対してアジャストを遂げた凌辱ものが、寝取られものなのです。

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