11/20

レストランには家では食べられない料理を食べに行きたいと思ってます。
下戸なのでお酒は飲めないし、なんでもないウーロン茶やソフトドリンクを頼みたいとは思いません。
ただ、ご飯はたくさん食べるつもりです。
お酒も提供するレストランとしては、やはり迷惑なお客さんなのでしょうか?
不快感を我慢してでもドリンクを注文すべきなのでしょうか

ネットをしばし騒がせる話題ですね。この話題が不死鳥のように何度でも蘇るのは、この問いに対して明確に答えられる人はいないし仮にいたとしても誰もが納得できる答えにはならない、という事なのでしょう。 しかし僕個人のこの問いに関する答えはわりとはっきりしています それは 原則① 飲み物を頼むかどうかはお客さんの自由である 原則② 頼まないお客さんを排除するかどうかは店の自由である そしてこの①②から必然的に導かれる 原則③ 排除せずに受け入れた以上は陰でも日向でも不満を言ってはならない これが僕の「水問題3原則」です。 本来これで回答終了なのですが、こんなもので誰もが納得するなら苦労はありません。 そこで(ここから後は全て蛇足ですが)なぜ納得しにくいかそのメカニズムを解説したいと思います。 誤解を覚悟で単純に言い切ると、料理は儲かりませんが飲み物は儲かります。ビールやワインなどは原価率では料理と同程度ですが、工賃(≒人件費)が雲泥の差です。 すんごいざっくり計算なのですが、料理1000円分の売り上げがもたらす利益を50円としたら飲み物売り上げ1000円は300円の利益、くらいの圧倒的な差があります。0円対500円みたいな店もあると思います(そういう店はおそらく飲まないお客さんを原則②に基づいて「排除」するでしょう)。 なので売り上げの中でD率(ドリンク比率)が高い店はもちろんやや低い店も、ドリンク売り上げ無しでは経営が成り立たないケースが多いという事になります。 これを解消するには2つの方法があります。ひとつは吉野家とかエリックサウス八重洲店のように、席効率と回転率にステ全振りする方法です。工賃を相対的に下げる事でDに頼らなくてもなんとかなる仕組みです。大手のファミレスとかだとそれすらせずに健全経営できてたりしますが、ありゃバケモンです。例外です。(セントラルキッチやアウトソーシング、そしてスケールメリットがそれを可能にしています) もうひとつは、価格設定を変える事でFとDの利益格差を小さくする方法です。僕は常々「すべての店が一斉に料理1.5倍、ドリンク半額にしたら水問題は解決する」と言ってるのですが、もちろんこの方法の実現可能性はほぼゼロです。なぜならこの施策は一斉にやらない限り、先にやったもん負けになるからです。 もしもそういう金額設定になったらそこで初めて質問者さんのおっしゃる「飲み物を頼まない代わりに料理をたくさん頼むから同じ事」というロジックも有効になるという言い方もできます。 ちなみにエリックサウスでは一般的な飲食店よりはまだ多少、FとDの利益格差が小さくなるようにコントロールがなされています。なので飲み物を頼まない分たくさん食べる、という消費行動を比較的受け入れ易くはなっています。 (ここまで書いた事は「そもそもなぜ水問題が『問題』とされるのか」という分析です。決して「お客さんは飲食店のこういう歪な収益構造を理解して飲み物をちゃんと頼むべき」と主張しているわけではないという点はご留意下さい!) 従来日本の飲食店はこの歪な構造のままでもなんとかなってきました。全体で見ればお酒を飲む人の割合は決して少なくはなく、まだ飲む人はヘベレケになる迄たくさん飲む事も多かったからです。ところが近年になって飲酒人口は減るばかり、飲む人も節度をもってスマートに飲む事が普通になりました。ここに来て潜在的な矛盾が水問題として表面化してきたとも言えます。 そこで一部の店は、低アルコール飲料やノンアルコール飲料に力を注ぐ事でこの状況をなんとかしようとしています。逆に言えばソフトドリンクのメニューに10年1日のように「ウーロン茶 コーラ オレンジジュース」が並んでるだけの店に来て「飲みたいものがないから何も頼まない」というのは極めてもっともな判断だと思います。誰もが孤独のグルメのゴローちゃんのような一種の独特な美学を貫けるわけではありません。 ですが、質問者さんのような方には是非、そういう店ではない、ソフトドリンクにも神経を行き渡らせているお店の努力を認知して欲しいとも思います。 「よろしければお飲み物のご注文うかがいます」と言って「水で」と返されても、上の原則③に従ってそれに対して何も思わないよう自らを律するというのはやらねばならない事ですが、ドリンクメニューを一瞥もせずにそれをされると少し心が折れそうになるのは正直なところです。 ここまで利益の観点から水問題の原因を分析しましたが、最後に、飲食店特にレストランが飲み物を頼んで欲しい理由は何も利益だけのことではない、という話を。 どんなお店もお店をなるべく「かっこよく」作ろうとしています。機能性重視だったり予算に限りがあっても、許される範囲で可能な限りその努力はします。 それは内外装に始まり、椅子テーブル、ユニフォームの選択、食器やカトラリー、そして料理の盛り付けに至るまで。そしてその最終の仕上げが「テーブルの上の風景」です。 多分ですが一般にお客さんが思っているよりお店は遥かにそこを重視します。 そこにはやはり飲み物が、無いよりはあったほうがしっくり来ます。例えば映画やPVで主人公がレストランでかっこよく食事するシーンを撮ろうと思ったらそこに飲み物のグラスは不可欠です。サイゼリヤが利益度外視でワインを売ってるのもそういう事です。 ただの水をかっこよく演出する方向もありますが、それをやりすぎるとさらに飲み物のオーダー率が下がるジレンマがあります。そういう意味で水の有料化もまた水問題解決に有効なのですが、ご存知の通り日本ではハイエンド店以外ではかなり難しい。 卓上の風景なんて客からしてみれば余計なお世話、ただの自己満足ではないか、と思う人もいるかもしれません。、、、その通りです。だからこれは、そうすべき、という話ではなく、そうして欲しいなあという願望です。お店のカッコいいデザイニングの仕上げによろしければ是非ご協力ください!みたいな。 あとちょっと書きたい事があるんですがついに字数が尽きました。 続きはツイッターにて!

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク