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敬愛してやまない作家さんがいます。自分が小説を書くきっかけにもなった人です。
先日、長い付き合いの友人に書いたものを読んでもらいました。これまでにも何度か見てもらったことがあります。友人の第一声は「お前の文章、なんかすごい〇〇さんそっくりになったな」と、敬愛している作家さんの名前が出てきました。
自覚なんて全くありませんでした。だからこそどこがそんなにも似ていて、どこが自分の文章なのか、見当もつきません。当の友人に聞いても「全部を見てそう感じた、どこがどうとか説明はできない」と言われます。八方塞がりです。
正直かなりショックでした。今まで自分の言葉だと思って書いてきたものが、いつからか人の模倣品になっていて、これから書くものもその人の劣化コピーでしかないんじゃないか、と思うと手が止まります。
小学生の頃から小説家を目指してきたので、書くことは自分の基盤で、書かないなんて考えられません。

六度先生はどう思いますか。また、もし六度先生だったらどうしますか。長文だぶん失礼しました。

遅くなってしまってごめんね。 年末で時間ができたのでやっと長文回答できるぜ。 まず、僕にはトラウマがあって それは高校時代に「お前の文章西尾維新みたいだね」と言われたことです。西尾維新のことが別段超ファンというわけではなかったんですが、アニメ版の化物語は超面白かったし、だから無意識のうちに影響を受けていてしまったんだな、と思いました。ちょっと質問者さんと状況似てますよね。 で、僕はそれがすごく苦痛だったので、西尾維新断ちをしまいた。 いや、小説は読んでなかったんですけど、読もうと思っていたものを読まずに置いておいた、みたいな。 同時に、西尾維新的なものを避けるようにもなりました。語りが重たい作品とか、言葉の意味にやたらこだわる作品とか。その結果、自分はラノベが書きたいのに、どんどんリアリティ志向になっていったように思います。 作家になり、一周回って今は、西尾維新にクソデカ感情を持っていることを公言できますし、ネタにもできています。今は自分が、言葉遊びが好きだってことも認められますし、その上で最も別のものも好きになりました。 では回答に移りますが、 そもそも敬愛する作家がいることは、すげーいいことだと思います。僕は西尾維新のことを好きだいうことが当時認められなかったので……。 芸術は模倣なので、似ていると言われるのは仕方ないことだと思います。っていうか何に似ていても、面白いものが描けるようになっているなら、そっちの方が5万倍重要だと思います。なぜなら出版社はコピーでも全然構わないからです。実際コピーじゃないし、すでに売れている作家に似ているなら売れる可能性が高いと判断するだろうから。 ただし、 これは「似ているね」って言われてショックを受けない人への指南ですよね。それでショックを受けない人は別に質問とかしてこないっすもんね。 僕はショックを受けた側なので、上記のようにその作家を遠ざけました。でも、その方法がいつも正しいわけでもない。 難しいですね。 さっき僕は芸術は模倣と言いましたが、 これはクリエイティブをやる人全てにとっての呪いであり、祝福でもあると思います。 自分らしさのためにものを書くのに、人に似てしまうというのは悪い冗談のように思えますよね。 でも、人間が考えることなんて、所詮そんなに違いはないんです。オリジナルに見える作品も、実際それはオリジナルではなくて、オリジナルの再配置のバリエーションにすぎない。だからオリジナルではなく、オリジナリティなんです。 かなり引いた視点から見たら「自分の言葉」なんてものはないと言えると思います。だって言葉って、誰にでも真似できるようにそもそも作られてるものなので。そうじゃなきゃコミュニケーションって成り立たないので。それでも「誰かの言葉」があるのは、その人が実績を残したからです。でも実績を残したその人の言葉も、最初は誰かからの借り物だったわけです。 ので、あなたは以下のことを実践すべきです。 まずはいろんな作品を読んで、敬愛する作家の文章を相対化しましょう。ただ盲目的に愛するのではなく、その作家の小説も数ある商品の一つ、売れる可能性の一つなのだという意識を持つように心がけましょう。 それがロマンスなら、ミステリやSFを読むといいです。それがミステリなら、ホラーやラブコメを読むといいです。小説だけでなく他のメディアでも好きな作品を作りましょう。 そういうことを意識的にしながら、ただただ自分が面白いと思うものを追求しましょう。 オリジナリティについて僕は、 自分の代わりはいくらでもいるけど、自分にしか書けないものがあるとも、思っています。極論に陥ることは弱さです。どっちも正しいんすよ。そのあわいでバランスを取るしかありません。でもまず、デビューすることは最初の自信になるはずです。 無責任に応援させていただくが、頑張ってね。

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