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喘息を発症し、主治医の指示で粉塵や埃っぽい場所への立ち入りを避けることが望ましい場合、適正配置として、元の粉塵の発生がある工場の現場作業から、事務所勤務や、(あれば)クリーンルームなどに異動させることを考えると思います。
必ず避けなければならない職場がある場合、本人の職務無限定性は果たせなくなりますが、アレルギーの重症度や原因により対応は変わるでしょうか。
①アレルゲンが明らかで、重症度からも必ず避ける必要がある場合(そば工場でのそば粉など)
②アレルゲンは明らかでないが、増悪や発作のきっかけを減らす目的(安全配慮)
③現場の立ち入りで発作が起こった事実はなくとも、(主治医が粉塵のある職場への立ち入りは望ましくないと言っていて、)「発作が起こるかもしれないから立ち入りたくない」という本人の不安を減らす目的(本人の希望) 
などのパターンを考えました。

アレルギーの重症度や原因から考える発想が「医学的」ですね。本人事由で職務無限定性(労働契約)を満たせないのであれば、労働条件の切り下げは不可避です。ここに、主治医や産業医・保健師などの医療職が「先に」介在することで、患者不利益回避の力が働いて、本人はだんまりを決め込めば、「労務提供は不完全だが、賃金待遇は完全なママ」でよいという構図が出来上がってしまいます。  ところが、たとえば育児で時短を申し出るときに、「早く帰るが、賃金はそのままでお願いします」という選択肢を申し出ることはありえませんよね。「賃金を優先して定時勤務をする(ただし迎えに行ったりする面での不便を享受)」か「育児時短制度を利用して早く帰るが、賃金はその分減額となる不利益を享受する」のいずれかを、労働者自身が、利益・不利益を加味したうえできちんと自己選択しているはずです(もちろん、判断のための適切な情報提供は必要ですが)。安衛法のもとの過保護的な健康管理の行き過ぎになっていないか点検が必要な場面でしょう。  この場面は、公務員で考えると、やや理解(受け入れ)しやすく、正職員であるにも関わらず、本人事由で何らかの職務限定が生じたときに、「必ず避けないといけない業務がある」にも関わらず、全体の奉仕者として、自身の生活・生計を職務より優先する(労務提供と賃金のギャップをみなかったことにする)という選択肢は、「全体の奉仕者」であることに整合せず、「全体の奉仕者」であることを前提とするならば、職務を限定しない任用は終了すると自ら申し出るのがあるべき姿(その後、待遇は相当に下がる職務を限定した任用に改めてトライするかどうかは別問題として)、ということになります。  繰り返しになりますが、働くということは、会社と労働者の二者間の約束事(契約)です。ですから、労働条件を変えるのか、それとも変えないのかも、医療職が簡単に間に入ってしまうまえに(それこそ変な仲裁業務のように思えます)、まずは二者間でしっかりと検討してもらいましょう。ただし、労働者保護の観点から、労働条件の切り下げは、労働者側の合意がなくてはなりません。たいていの労働者は、(自身の不完全労務提供は棚上げにしても)待遇切り下げには簡単には合意しませんので、そうなると、現契約に沿った労務提供を会社側としては、理屈上求める、求め続けるほかない、ということになる、そういう順番だという理解が必要でしょう(医療職としては我慢強く見守る)。  結論をいえば、①のケースの場合には、工場から地理的にも離れた別の事務所などへの転勤なども行わなければ、工場に隣接した事務所では発症リスクがないわけではなく、結局、本人が退職を選択する場合が多いのではないでしょうか。②のケースでは、どちらかといえば、医療職が労働者にうまく利用されてしまうパターンに近いもの(むしろ、もとより職務無限定ではなく、工場の現場作業の職務限定従業員が、事務職への転換を図るケース)に近いものと思われますが、産業医学的には「労働条件の本質的変更」を伴わないあくまで一時的措置として、時間稼ぎ(たとえば、相対的に曝露の少ない部署への配置)をして、その間にしっかり二者間で話し合ってはどうかという本質に向き合わせる対応が良いのではないでしょうか。  私自身も実際に、発汗により皮膚疾患が悪化するが、現業職の労働者について、本人の主体的判断により、発汗の程度の少なくて済む業務(事務作業等)への職種転換は期待できないから退職するという判断を見守ったことがありました(せめてものできることはないかと総務とも協議し、離職票の記載の工夫だけはした)。

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