10/15

説教おじさん、いつもためになるツイートをありがとうございます。
mRNAワクチンに関する質問への回答で、「mRNAワクチンではmRNAの核酸塩基を人工的に修飾する(ウリジンを修飾ウリジンに置き換える)ことで、Toll様受容体をすり抜ける仕組みになっている」と書かれていましたが、mRNAワクチンにそのような人工的な操作をすることで、何か問題は起きないのでしょうか。ウィルスのmRNAが免疫をすり抜けるようになるとか、少し怖いです。

これについては、ハンガリー出身の女性科学者で、ビオンテック社(ファイザーワクチンの開発元)の研究員でもある、mRNAワクチンの開発において革新的な発見をした、カタリン・カリコ博士の発見について説明する方が早いと思うね。 その前に、mRNAワクチン開発の歴史を少し振り返ってみるよ。 mRNAワクチンの技術は、1990年代から研究がされていて、実は意外に歴史が長いものなんだよ。mRNAワクチン開発の最初のチャレンジは、mRNAという非常に壊れやすい物質をどうやって人間の体内に入れるかという点だったんだね。これについては、脂質ナノ粒子(LNP)で覆うことで解決され、その技術は1990年代に既に確立されていたんだよ。 次のチャレンジは、ウィルスから転写したmRNAにCAP構造と言われるタンパク構造を付加する技術だね。ウィルスのmRNAから特定部位のたんぱく質(コロナではスパイクたんぱく質)の生成に関する部分だけを転写した場合に、そのmRNA(の一部)にはこのCAP構造が付いていないんだね。CAP構造はmRNAの安定化や翻訳の促進に必要なもので、これがないとmRNAの翻訳(リボソームでタンパク質が合成)が進まないんだよ。このCAP構造を付加する技術も2000年代に確立されたんだね。 ここまでで、LNPとCAP構造付加の技術的なブレークスルーがあり、残る問題は、『体内に入ったmRNAがToll様受容体(TLR)に発見され自然免疫の応当を引き起こして排除されてしまう』という点に絞られたんだね。これが解決されないと、折角mRNAを注入しても、免疫機構に排除されてしまうんだけど、この解決に寄与したのが、冒頭のカリコ博士の発見なんだね。 ところで、人間の体内では、DNAからmRNAが転写により生成され、そのmRNAがリボソームで翻訳されることで、たんぱく質が合成されるんだけど、実はRNAはmRNA以外にも、tRNAとrRNAという種類が存在するんだよ。tRNAは、リボソーム内で、mRNAにアミノ酸を運搬したんぱく質を合成する役割を果たしており、rRNAはリボソームの主成分でmRNAとtRNAによるタンパク合成にエラーがないかチェックする役割を果たしているんだね。 さて、前置きが長くなったけど、カリコ博士は、このtRNAがToll様受容体をすり抜けると言うことを発見し、その要因がtRNAを構成する核酸塩基がmRNAとは異なることにあることを突き止めたんだね。この発見により、mRNAの核酸塩基であるウリジンをtRNAの核酸塩基である修飾ウリジンに置き換えることで、mRNAがToll様受容体をすり抜け免疫応当を起こさずに細胞内に存在させることが可能になったんだね。 ようやく結論だけど、つまり、修飾ウリジンはもともと人体に存在するtRNAの核酸塩基だから、完全に人工的なものではないんだよ。したがって、原理的に、mRNAのウリジンを修飾ウリジンに置き換えることで大きな問題が起こることはないと考えられているよ。 もちろん、実際に体内でどのような反応が起きているかは本当のところは分からないので、不測の事態に備えて一定期間は様子見することが合理的だと思うけどね。

スポンサーリンク

スポンサーリンク

スポンサーリンク